ユルリ島のソネット①幻の島を駆ける馬。

ユルリ島ポスター3種類には、それぞれ「ソネット」が添えられています。「ソネット」とは14行の定型詩の事で、で島の情景や歴史背景、島への思いが14行に凝縮され綴られています。

ユルリ島ポスターは、その素晴らしい被写体が中心のポスターで、ソネットはあくまでもポスター全景を邪魔しないよう、添えられた文章です。しかし、その14行の詩は、決して軽々しいものではなく、未来に残したいユルリ島の価値が込められています。過去には人が生活していたユルリ島も、今は渡ることが出来ません。直接見る事や感じる事が出来ない、島の歴史や自然、知られていない価値を、14行のソネットを通じて、感じて頂けたら幸いです。

すこし離れてポスターの全景を目で楽しみ、近づいてソネットを頭の中で楽しむ。ソネットに感じるものは人それぞれです。ソネットをゆっくり読む時間のない方のために、ここで紹介させて頂きます。

ユルリ島ソネット―1

幻の島を駆ける馬。

その島を渡る風には、常に馬の姿があった。

海面から立ち上がる断崖の上へと昆布を引き上げるため、

昆布漁師たちが馬の力を必要としたからだ。

人は馬を船に乗せ、そして馬は島へと渡った。

北海道本島の東端、根室市の

昆布盛という集落のすぐ先に浮かぶ島、ユルリ。

昆布の干場であったこの島にはかつて十軒近くもの番屋が建ち、

その一軒一軒で漁民は馬とともに生きてきた。

いま、島に人影はない。かつての島民は対岸の集落へと還った。

貴重な野草の群落と野鳥の営巣を守るため立ち入りは制限され、

馬たちだけが残された世界から切り離された島を、ただ静寂が支配する。

すぐ眼の前に見えながら、たどり着くことはできない場所。

それはいわば幻だ。幻の島、ユルリ。その島の草原を馬だけが駆ける。

そう、彼らもまた、いまは美しい幻の一部となって。

2011年から、北海道根室市からの委託により、
ユルリ島(無人島)に生息する野生馬の撮影を続けている写真家、
岡田 敦さんの公式HPです

岡田敦 公式HP
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